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この街この人

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第1回 琴に向き合うひたむきな姿勢が上質な音色を作りだす

琴司

玉重 彰彦さん





 優雅で奥ゆかしい音色を奏でる和楽器、琴。木材を削る、焼き付ける、磨き上げる、絃をしめる、装飾を施す…各工程をひとつずつ丁寧に“真面目にやる”ことで、上質な音、響きを作り上げていく。

 原木から作られる琴の製作工程は、桐材の乾燥までに約1年かかる。その後、甲と呼ばれる本体部分をカヌーのような形に削り、表面をむらなく焼き付ける。ワイヤーブラシで木目を出し、木の樹脂で光沢をつける。その後、装飾、金具付け、糸締め、調整をする。これらの工程を熟練した手作業で丹念に仕上げていく。

 創業123年、和楽器販売店がルーツ。三代目の父・美博さんが楽器修理の技に磨きをかけ、試行錯誤を重ねた後に琴製造を専業とする道を拓いた。
 「親の跡を継ぐということは特別なことではなかった」と話す彰彦さんは、物心がつく頃から父親の傍らで作業を見て育った。直接何かを教えてもらったわけではなく、見よう見まねで技術を習得した。

 日々、琴と向き合う中で父に言われていた“時間を節約しろ”という言葉。物やお金だけでなく、時間を節約することで素早く丁寧に仕上げるという、職人を生業とする上での重要な教えを受け継いだ。

 その真摯な姿勢と高度な技術に信頼を寄せるファンは、国内にとどまらずアメリカやオーストラリアなどからもオファーもある。

 「職人は、芸術家でもアーティストでもない。自分の思いを相手に押しつけるのではなくお客さんが喜ぶものを作っていきたい」と抱負を語った。


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(サンデーうべ 2017年10月13日号掲載)