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この街この人

地元やまぐちでがんばる人、挑戦する人を紹介します

第10回 ガラスと対話し つくりあげる

ガラス作家 川田 絢子さん




 ガラスに魅了された少女は着実に技術と知識、経験を身につけて、ガラス作家となった。山陽小野田市を拠点に活動する川田絢子さんは第7回現代ガラス展でホンムラ審査員賞を受賞。独特のフォルムと質感を持つ作品「吸収」は、嬉しいことも辛いことも全てを受け入れるという思いを、葉脈がまっすぐなイチョウの葉で表現した。
 幼少期に見たテレビ番組で、吹きガラスが作られていく様子にひきつけられたのがきっかけだった。中学校の卒業文集には将来の夢を「ガラス職人」と記し、その夢を叶えるため高校卒業後は倉敷芸術科学大学に進学した。ガラスコースを専攻し、ガラスに関するさまざまな技法を習得した。中でも、粘土で作った原形を石こうで型取りし、その型にガラスをつめて電気炉で焼成する技法「キャスト」に磨きをかけた。在学中には第5回現代ガラス展で入選を果たしている。


 卒業後はガラス制作体験や講座などを行うきららガラス未来館(山陽小野田市焼野)に就職。働きながら制作活動を続けられる恵まれた環境だが、当初は環境の変化に対応できず何を作っていいのかわからない悶々とした日々が続いた。早く技術を上げなければという思いが焦りを生み、学生時代に持っていた自由な感性が思い出せなくなっていた。

 転機が訪れたのはグループ展を開催したときのこと。来場者に評価されたことをきっかけに、気持ちのスイッチが切り替わった。自分のやりたいことを突き詰め、多くの人に見てもらいたいと、新たな決意で作品づくりに取り組めるようになった。


「自分の思いだけをガラスに押し付けてはいけない」。学生時代に繰り返し恩師から言われた言葉だ。当時はその意味を理解できなかったが、スランプを乗り越えた今ならよく分かるという。今回受賞した「吸収」は自分自身でもある。起こることすべてを糧とし、吸収してスキルアップしていく。次は個展の開催を目指して創作活動は続く。

(サンデーうべ 2018年8月10日号掲載)