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■第10回■
高尿酸血症と腎臓
高尿酸血症とは、血液中の尿酸値が高くなった状態で、自覚症状はまったくありません。尿酸値の上昇は、プリン体の過剰摂取、肝臓で尿酸を作りすぎる場合、腎臓から尿酸が排泄されにくくなる場合に起こります。
これに影響を与える重要なものとして、飲酒や過食といった生活習慣や、肥満があると更に助長します。またストレスなどの影響も考えられ、これらより、生活習慣病のひとつとされています。
女性ホルモンの働き(女性ホルモンは尿酸の排泄を促進して尿酸値の上昇を未然に防ぐ働き)の影響から、女性に少なく男性に多く、女性の場合は更年期以後に増加します。
患者数は年々増加しており、現在600万人にも及ぶとも言われています。尿酸は水に溶けにくい物質のため、高尿酸血症を放置すると、10人に一人の割合で、関節などに尿酸の結晶がたまっておこる急性の関節炎『痛風』になってしまいます。痛風発作は文字通り「風が吹いても痛い」激痛ですが、高尿酸血症でもっとこわいのは、実は腎臓の合併症です。痛風を生じなくても、3年経過を機におよそ5人に一人の割合で、何らかの腎障害を引き起こすと言われています。
腎臓の組織に尿酸が沈着すると、腎臓の働きがおとろえ、放置すると末期腎不全となります。高尿酸血症による腎障害を『痛風腎』と言い、血液透析導入原因の0.4%に当たります。痛風腎の早期発見・管理には、尿テステープによるたんぱく尿、尿潜血反応、尿pHなどの検査、尿沈渣(顕微鏡検査)による尿酸結晶・顕微鏡的血尿のチェックが必要になります。
また、尿酸の結晶が尿路で固まってしまうと尿酸結石となり、結石が尿管に詰まった場合は激しい痛みを生じます。
高尿酸血症と診断された方は、痛風腎・尿酸結石のチェックもきちんと行い、適切な予防対策(プリン体の減量、水分摂取、ゆったりとした運動など)や、必要に応じた薬物療法(痛風発作の予防、尿路管理療法など)が重要になります。
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[講師]
わたなべ泌尿器科院長 渡辺悦也 先生
■渡辺先生プロフィール
わたなべ泌尿器科(小野田市中川)院長。宇部生まれ宇部市育ちの40歳。日本泌尿器科学会認定の専門医、指導医。日本癌学会、日本癌治療学会会員。 |
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※この特集は、2005年にサンデー小野田に掲載されたものです。 |